小説 輝く月の夜に 5 (情熱を傾けて)
聡史にオンナを紹介してもらった旭は断然、仕事にも力が入るし何にしても生きて行く活力を天に与えられた様に毎日に充実していた。
毎晩のようにノゾミと電話で他愛の無い話に花を咲かしてこれは恋愛だと恋の蜜の味に浸っていた。
ノゾミとの始めてのデートも無事に映画を観に行って、車はアサヒのアコードワゴンに乗って映画のあとは洒落たダイニングバーで食事を二人で取った。
旭はこのあとラブホテルにノゾミと行きたかったが初デートで手を出すのも相手にどう切り出すか分からないし、軽いオトコだと何よりそう思われたくはなかった。
その日はノゾミを家に送って行く別れ際にさりげなくサイドシートのノゾミにフレンチキスをする事どまりだった。
あくる日、聡史の所の仕事が無かったため、一日を有意義に過ごせる時間が出来た。
今日は『ジェイド』のライブで歌う自分の曲とヒサシとのコンビネーションの自分のパートの練習をしようと決めた。
ボーリング場とゲームセンターとカラオケのあるアミューズメント施設の『オークランドボウル』に行って、一人カラオケで朝9時から昼過ぎの3時までのフリータイムでノドを慣らしてから、もちろん自分の曲に合う歌を選曲して自宅にある録音機材で曲を録ることにした。
ローンで40万円相当の機材が自宅にある。
ターンテーブルなどを入れたら中古のソコソコ良い車が買えるほどだ。
その日の夜、ヒサシと合流して歌を合わせてさらにライブの練習をした。
練習の合間にまだ付き合う間柄ではないが、とある女性と最近知り合ってうまくやっている事をヒサシに話した。
ヒサシは彼女が居るのだが、フリーだった旭に良い人が出来て自分のことのように喜んでくれた。
ヒサシは本当に良い友人だ。マブダチと言える。
オンナの事を話したあと、
『じゃあ、いつものヤツ行こうか。オイシイの入ったもんで。』
と、ワンパケを取り出した。
渋いウッドパイプをおもむろに取り出し、指でちぎって一杯分詰め込むと
『一発目、先に吸いなよ。』と、
気前よくご馳走してくれた。
パイプをくわえ、ライターで着火すると思いきり腹に吸い込んだ。
ズーンと体の下の方から上に向けて快感がほとばしる。
フーッとモクモクと白煙を吐き出すと、森林の土の様な匂いがあたりに立ちこめてきた。
『でぇらヤバイじゃんか、このネタ。ご馳走様。マジでヒサシに感謝するよ。』
旭はすでに一発でドンギマリ、二発目、三発目でガンギマリになった。
ウィードを吸うと頭も冴えて歌も心から上手くなる。クラブに行けばダンスも自然とカラダが音に乗っかる。
他人に何も害の無いこのただの草が何故今の社会では禁止されているのか、不可解で仕方がない。
2000年頃からアメリカでは医療大麻がまかり通っているが、日本はアメリカの10年遅れで日本にアメリカの文化がやってくるというのに未だ日本では禁止されている。
ヒップホップも10年近くして日本のカルチャーとして根付いた。一部の変わった人間がレゲエのカルチャーに足を踏み入れていたという。
旭とヒサシはブリブリになってゴキゲンだった。
来週はクリスマス、今夜の月は上弦の三日月だった。
つづく
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