小説 輝く月の夜に (始まりの日常)
『カタン。担当さーん、官物の本を借りたいのですけど。』
奥田 旭 は 拘置所で司馬遼太郎の本を読んでいた。
司馬遼太郎全集の、燃えよ剣を拝読して交通事故の業務上過失と飲酒の刑罰の裁判を執行猶予待ちですごしていた。
そこでの服装はグレーの上下の生地の分厚い、なんか野暮ったい格好だった。
『おい、246番。この紙に下書きで薄く願い届けの内容をかいてやるから、しっかりと書き込めっ。』
担当官にも色々とあるが、わりと親切な担当だった。
あと二ヶ月は此処でくらさなければいけないのか。
旭(あさひ)は運動の時間に筋肉トレーニングをし、あとの時間はレゲエのリリックを執筆してやりようのない時間を自分なりに有効にけずっていった。
司馬遼太郎を速読で脳みそにインプットすると、流れる様にイデアの源泉が湧き出てくる。
合計6ヶ月の審判の間に16曲仕上げる仕事量だ。
ライムと言って韻を踏んで作詞をするので無い頭をしぼって書くから時間が過ぎるのも早い。
当時、うやむやに別れた彼女を想ったラブソング.Badな事を歌ったバッドマンチューン、トレンドを取り入れた今どきソング。
基本的にレゲエは説教にもにている。
それは柔らかくさりげなく聞き流していると分からないが、基本的にレゲエなんて説教一辺倒だと思っている。
名古屋の今は解散してしまったあるサウンドクルーが『俺んたぁのレゲエは説教レゲエ!』と
マイク越しに唸って言っていた。
時は過ぎ、無事に執行猶予3年で旭はシャバに帰って来た。
つづく
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